43分/(2005年)2016年再編集
撮影・編集・録音:川瀬 慈
使用言語:アズマリ隠語 アムハラ語(日本語字幕)
撮影場所:ゴンダール エチオピア連邦民主共和国
撮影:2001〜2006年
弦楽器マシンコを弾き語るアズマリ(自称:ザタ)は、エチオピア北部の地域社会において古くから音楽をなりわいにしてきた職能集団である。アズマリは諸侯たちが乱立し領地争いを繰り広げた“ゼメナ・マサフィン(エチオピア群雄割拠の時代)”に、王侯貴族の保護のもと活躍したといわれる。彼らは王侯貴族の長旅に召使いとして参加し、食事のあとや野営の晩のひとときに主を楽しませ、厳しい旅の疲れをねぎらい、またしばしば戦場に楽器を携えて現れ、兵士達の士気を高めるために歌ったともいわれている。
エチオピア北部の都市ゴンダール周辺にはアズマリの村が点在する。演奏機会に恵まれた場所を仲間から聞きつけ、あるいは親族のアズマリ・コミュニティが存在する地域をめざし、多くのアズマリが北部の村々よりエチオピア全土へ音楽活動に旅立ってゆく。アズマリの音楽は、結婚式などの祝祭儀礼や娯楽の場、キリスト教エチオピア正教会の各種行事や農作業など、地域社会の多様な場において要請される。近年では、都市のホテルや伝統音楽を専門にしたクラブの専属歌手として働くものや、カセットやCDをリリースし海外で公演活動を行う“スターアズマリ”もいる。
本作品『僕らの時代は』は、アズマリの少年少女が歩む人生の道程を、2001年から映像によって数年ごとに記録してゆくプロジェクトの一部である。本作では、思春期の少年二人、タガブとイタイアに焦点をあてた。音楽職能を生きる二人の日々の営みとともに、アズマリ集団内部における彼らと大人たちとのなわばり争いをめぐる葛藤、二人のポピュラー音楽シーンへの憧れ等を、私自身と二人の対話を中心に描いた。
【本作品に関連する論文、エッセイ等】
「エチオピアの音楽職能集団アズマリの職能機能についての考察」『国立民族学博物館研究報告』41(1), pp.37-78, 2016
「コミュニケーションを媒介し生成する民族誌映画 -エチオピアの音楽職能集団と子供たちを対象とした映画制作と公開の事例より-」『文化人類学』80(1), pp. 6-19, 2015
『フィールド映像術』(FENICS 100万人のフィールドワーカーシリーズ15)分藤大翼・川瀬 慈・村尾静二編 古今書院, 2015